こんにちは!元公務員のHiroshiです。
大学生・社会人の中には、公務員への就職・転職を考える人が多いです。
その中で「仕事のやりがい」は気になる要素ではないでしょうか?
そこで今回は「公務員の仕事の本当のやりがい」を取り上げます。
本記事の内容
- 公務員はやりがいがある仕事って本当?
- 公務員はやりがいの感じにくい仕事です【その理由を解説】
- やりがいを持っている公務員の特徴
- 公務員はやりがいはないけど、超魅力的な職業
この記事を書いている僕は、県庁に勤めていた経験を持つ元地方公務員。
僕自身の体験・周りの職員との話から、よりリアルな部分を書いていきます。
この記事を読むことで、公務員のやりがいが分かり、将来の職業選択の参考になるはず。
3分ほどで読めるので、ぜひ最後までお付き合いください。
【前提】公務員はやりがいのある仕事って本当?
Web上のメディア等では「公務員はやりがいのある仕事だ」と言われます。
その一方で「公務員はつまらない」とのイメージも根強いです。
まずは僕の経験から「公務員のやりがい」の理想と現実を話します。
よく言われる「公務員の仕事のやりがい・魅力」
- 地方公務員は地域に密着した仕事を通じて、住民を元気にできる
- 規模の大きな仕事もできるので、多くの人の役に立てる
- 利益追求をしないので、社会貢献度の高い仕事ができる
上記は「公務員のやりがい」として、採用パンフやメディアでよく挙げられるものです。
(面接でもよく取り上げられる話でしょう)
総じて、公務員の仕事のやりがいは「人の役に立てる点」だと言えます。
【現実】やりがいを感じている公務員はごく少数に見えた
しかし現実として、仕事にやりがいを感じている公務員は非常に少なかったです。
もちろん僕の主観・他の人と話した経験に過ぎません。
しかし、現役公務員の方も含めて共感していただけるとは思います。
よくある「公務員の仕事のやりがい」を鵜呑みにするのはおすすめしません。
「公務員のやりがい」を書いているのは誰?
そもそも「公務員のやりがい」が記載されているのは以下の媒体です。
- 自治体の採用パンフレット
- 公務員予備校のメディア
自治体も予備校も、多くの人に公務員試験を受けてほしいと思っています。
当然、パンフレットやサイトに「やりがいはありません」とは書くわけないですよね。
また、上述した「やりがい」は非常に抽象的です。
住民を元気にできる・役に立てる等々は、具体性に乏しい上に短絡的です。
正直誰にでも書けるような気がします。
本当の「公務員のやりがい」を知るには、実際に公務員の仕事をした人のリアルな声を聞くことが不可欠。
※マイナスなことを書かないようにと「検閲」が入るので笑
やりがいを知りたければ、知り合いの公務員に聞くのが最も良いはず。
少なくても「利益追求しないからやりがいがある」等を鵜呑みすべきではないです。
【行政職】地方公務員の仕事にやりがいがない3つの理由【元県庁職員が語る】
「やりがい」は抽象的な表現で、何にやりがいを感じるかは人それぞれ。
ただ、あえて「やりがい」を具体化すると、以下が言えるかと。
- 自分の仕事が誰かの役に立っている、価値を提供していると実感できる
- 新しいものに挑戦し、努力をすること
- 成果を出し、それに見合った報酬(給料)をもらえること
しかし、公務員の場合は構造的に上記の「やりがい」を感じにくいです。
理由①:自分の仕事が価値を提供している実感が得にくい
公務員は、自分の仕事が誰かの役に立っている実感を得にくいです。
なぜなら、公務員はとにかく不毛な仕事が多すぎるから。
- 上に説明をするためだけの資料作り
- 文書の「てにをは」や言い回しにこだわりすぎて残業
- 担当者の裁量がほぼなく、どんな小さなことでも起案→決済をする
それ自体は何も価値を生まない仕事が多く、直接的の役に立つ仕事が少ないんです。
特に本庁はなおさらですね。
事業を行う際も、県庁や市役所の公務員が直接行うことはほぼありません。
あらゆる事業は委託、つまり外部の民間企業や団体にお金(委託料)を払って仕事を行ってもらう形です。
たとえ事業の恩恵を受けた企業・個人がいても、その声が直接公務員の方に届くことはかなり少ないです。
必然的に、役に立っている実感を得にくいんですよね。
もちろん市役所ならば、住民の方と直接接する機会がより多いでしょう。
その分、自分の仕事が「役に立っている」と感じやすいかもしれません。
しかし、公務員の仕事は「やって当たり前」だと思われている部分もあります。
なかなか「感謝」にはつながりにくいではないかと思いますね。
理由②:新しいことにチャレンジしにくい環境
行政は「トップダウン型の巨大組織」です。
その中で生きる公務員は、新しいことにチャレンジしにくい部分があります。
何か新しい事業を行おうとしても、上を納得させるための時間的・労力的コストがとにかく大きすぎるんです。
課長・次長・部長・副知事・知事…と順々に説明。
一人でもバツがついたらイチからやり直しです。
また、組織の体制としてとにかく保守的。
新規事業では、他県の成功事例・国の方針等と照らし合わせて財政課が予算を組みます。
財政課としては「税金を無駄にしてはいけない」思いがあり、成功事例等の効果が見込める証拠がないと事業化は無理です。
必然的に、前例がない斬新な施策を行うのは非常に難しいんですよね。
つまり「やりたいこと」があっても、コストが大きい上に実現可能性が低いんです。
頑張っても給料が変わらないので、新しいことへのモチベーションも難しい…
前例踏襲に文句を言うのはダサい感じもしますが、前例踏襲を打破しようと思える環境が整っていないので、個人的に仕方ない気もします。
加えて、大して効果がない・やりたいと思えない施策を議員や上から押し付けられることもあります…
理由③:年功序列の給料体系
公務員の給料は年功序列なので、頑張るインセンティブが働きません。
「やりがい」は、仕事を頑張って結果を出す→正当に評価されて生まれる面も大きいです。
頑張っても頑張らなくても給料が変わらないなら、多くの人が「頑張らない方が得」だと考えるはずです。
もちろん公務員は数字で測れない仕事も多いです。
しかし横並びが過ぎるのは致命的な気もします…
年功序列の給与体系によって、新しいことに挑戦するモチベーションが働かない部分もあります。
「職員にはどんどん挑戦してほしい」と言うトップがいますが、まずは挑戦したいと思える土壌を作ることからだと感じます。
やりがいのためには、なんだかんだ「お金」も大事ですよね。
参考:僕はやりがいがないと思い、地方公務員を辞めた
僕が公務員を辞めたのも、結局「やりがいがない」「つまらない」と思ったからです。
- 仕事の多くが上への説明や説明資料づくり
- 上のちょっとした発言で仕事の方針・仕事量が一気に変わる
- どうでもいいような文章の体裁・言い回しの修正に何時間もかける
2年目に上記の出来事が多くなり、やりがいのなさを強く感じていました…
「自分の仕事が何に役立っているのか」分からなくなったんですよね。
また、公務員は頑張っても頑張らなくても給料が変わりません。
現状維持が最も仕事量が少ないので、新しいことを避ける思考になっていました。
(新規事業は業務量や残業が増えますが、給料は同期と変わらないからです)
学生時代は「仕事にやりがいは求めない」と思っていました。
しかし、いざ働いてみると価値観が変わっていきますね…
関連:県庁に首席入庁した僕が、2年で公務員を辞めた3つの理由
【例外】やりがいを感じている公務員の特徴
公務員はその性格上、仕事にやりがいを感じにくいです。
しかし、公務員の中でもやりがいを感じている方もいます(少ないですが)。
希望部署で仕事ができている公務員
県庁などの公務員の場合、異動希望が通ることはほぼありません。
しかし、まれに異動希望が通る→やりたかった仕事ができる場合があります。
僕のいた県庁では、観光課は非常に人気でした(多分どこも観光系は人気)。
希望して配属された人が多かったためか、仕事が楽しそうな人も普通にいた印象です。
(観光課は成果も見えやすく、自分の仕事の価値が分かるのもあると思いますが)
「希望部署に異動=やりたい仕事ができる」わけではないので要注意。
業務が個人によって細分化しており、課内の同じ係でも仕事内容が全く違うからです。
つまり、自分のやりたい業務の担当部署に異動できても、その仕事を実際にできるかは別問題になります。
(通常、人事課が絡むのは部署の配置まで。担当業務は課内の管理職が決めます)
技術職の公務員
技術職の公務員は、やりがいを感じている人が多い印象があります。
- 専門的な知識をもとに事業者を指導・監督
- 自治体の建築物や道路を作ったりする
技術職は住民・事業者と直接関わる分、感謝されることも多いです。
加えて、自分の仕事の成果が目に見えて分かります。
加えて、行政職ほど異動もありません。
自分の専門分野で仕事ができるので、やりがいを感じやすいのも納得です。
技術職は基本的に出先機関が主戦場です。
しかし、優秀な人だと本庁に異動して事務的な仕事をする場合があります。
本庁に来た技術職の人は「つまらない」「戻りたい」と言っている印象ですね…
公務員としての使命感・プライドに燃えている人
公務員としての使命感に燃えている人も「やりがいがある」と言っていました。
(同期の中に少しだけいました)
少数ですが「公務員として住民のために働くこと」に喜びを感じる人もいるのでしょう。
目の前の仕事に注力できる人
目の前の仕事に力を注ぎ、自分なりの喜びを感じられる人。
それができる方は、公務員が向いています。
- 起案文書(稟議書)の修正がなかった
- 上司を説得して自分の思惑通りに動かせた
- 先輩の起案文書や資料にたくさん修正を入れた
例えば上記のことに、やりがい的なものを見出すイメージです。
(県庁時代の知り合いが言っていました)
公務員に限らず、大きな組織ほどやりがいを感じにくいもの。
サービスの受け手から遠い上、手続きも煩雑になるためです。
「自分の仕事の価値」のような根の部分を考えると、やりがいを見出すのが難しく、続けるのが辛くなります。
しかしあえて大局的に考えずに、目の前の仕事にフォーカスできれば話は別。
身近なことで自己成長を感じるマインドは、公務員を続ける上で重要だと感じます。
地方公務員・国家公務員はやりがい以外の魅力が大きい
多くの公務員の方も、仕事にやりがいがない・つまらないと感じているはず。
しかし、公務員は続ける人が圧倒的多数派です。
続ける人が多い理由、それは「やりがい以外のメリットが最強」だからです。
公務員のメリット
- 年功序列で上がっていく給料
- 定年後もかなり安泰(夫婦で公務員なら尚更)
- 社会状況に左右されにくい、抜群の安定性
- 各種手当・休暇などの充実した福利厚生
- 高い社会的信頼性
昨今は「公務員はおすすめしない」的な論調もあります。
しかし待遇的な面を見ると、公務員は確実に恵まれた仕事です。
また、確かに公務員の仕事にも、辛いことはあります。
部署や個人によっては長時間残業もあるので、ブラックと揶揄される場合も。
関連:【闇】公務員のブラック要素5選。元県庁職員が語るリアル
しかし、公務員は身分的に守られている上、数字を求めるプレッシャーはありません。
給与体系が年功序列であり、結果を出さなくても給料は上がります。
平均以上の給料・ボーナスが保証されているのは本当に強いです。
加えて、地方公務員なら引っ越しが必要な転勤はほぼありません。
「ゆとりを持てる」意味で、確実に恵まれている職業だと思います。
おそらく、多くの公務員は以下を天秤にかけているはず。
- 公務員でいるメリット:安定・福利厚生・社会的な信頼性
- 公務員のデメリット:やりがいのなさ・つまらなさ
メリットの方が大きいと判断する人が多いため、辞めずに続ける人が大多数なんです。
逆に「つまらないけど、メリットが大きい」との声はよく聞きましたね。
公務員のやりがいに関するまとめ
公務員の仕事は、組織の構造・スタンス・給与体系から、やりがいを感じにくいです。
住民の人から悪く言われる等の苦労もあります。
しかし、公務員のメリットは非常に大きく、うまく折り合いをつけている人も多数。
多くの方が「収入を得るための手段」と割り切って、プライベートの充実・生活面を重視して仕事をしていると言えます。
僕は退職しましたが、公務員は非常に恵まれた職業である点は断言できますね。
僕は辞めたから尚更「公務員って本当に強かったな」と感じるので。
総じて、大事なのは「価値観とのマッチング」です。
- 数字を求めたい・ 価値を実感できる仕事がしたい
→公務員は向いていない・辞める - 割り切って考えられる・公務員のメリットに魅力を感じる
→公務員が向いている・続けられる
自分の価値観と合っているかが本当に大事。
ご自身の考え方と照らして、より良い選択をしてください。
(僕の場合、単純に自分には合っていなかったので辞めただけです)
本記事が少しでも参考になれば幸いです!
公務員になりたい方へ
ここまで読んで「公務員になりたい」と思った方もいるはず。
ぜひ以下の記事を参考に、公務員になるための準備をしましょう。
勉強を始める前に行うべきこと
「最初に必ず行うべきこと」を詳しく解説しています。
(紹介している無料ガイドブックは社会人向けですが、学生にもかなり参考になるはず)
公務員試験の予備校比較
大手の予備校について、元県庁職員の視点からまとめています。
公務員試験の独学対策
独学で県庁に首席入庁した僕の勉強法などを以下の記事でまとめています。