こんにちは!元公務員のHiroshiです。
「公務員は残業が多い」とよく言われますよね。
霞ヶ関が不夜城と言われていますし、県庁や市役所などでも日付が変わっても仕事をしている方もいらっしゃいます。
では、そもそもなぜ残業が多いのでしょうか?
もちろん単純に「業務量が多いから」というのもあります。
しかし、何が業務量の多さを招いているのかを考えてみると、それは公務員の仕事のやり方や組織内における独特の文化やしがらみに起因するところが多いのです。
そこで本記事では、「公務員の業務量が多く、残業が増えてしまう理由」をテーマに取り上げます。
【はじめに】公務員の残業時間のデータを鵜呑みにしてはいけない
公式な統計資料(地方公務員給与実態調査や人事院勧告)によると、公務員の残業時間は以下の通りです。
月の残業時間 | 1日平均 | |
国家公務員 (本府省) |
29時間 | 1.3時間 |
国家公務員 (本府省以外) |
17時間 | 0.8時間 |
都道府県庁 | 12時間 | 0.5時間 |
※月の出勤日を22日と仮定
上を見ると、霞ヶ関の国家公務員でも平均して19時前後、県庁では18時前には帰っていることになります。
断言できますが、これは絶対にあり得ません。
霞ヶ関に出向で行く人は県庁からも多いですが、「朝の3時まで仕事するのが普通だった」「毎日タクシーチケットで帰っていた」と言っていました。
また、県庁でも激務のところは月に100時間を超える残業が普通なので、この残業時間が本庁と出先の平均値だとしても、これはちょっとあり得ないですね。
つまり、このデータを鵜呑みにしてはいけないということ。
なぜこのような残業時間のデータが出ているかというと、おそらくきちんと残業時間を申告していないからでしょう。
- 数時間の残業では残業代を申請しない風潮がある
- ノー残業デーには残業代が出ない(出ても決済権者が上位の人になるために、残業を申請しないように言われる)
- 残業代には予算上の制約がある
つまり、残業代を申請したところで承認されないor残業代が出ないので、結果としてサービス残業になっており、それが残業時間のデータに反映されていないということ。
以下の記事にて詳しく書いているので、興味のある方はぜひ読んでみてください!
公務員の残業が多い理由。それは仕事量が増えるばかりだから
公務員の残業がなぜ多いのかにスポットを当てていきます。
よく「多様化する行政ニーズに対応するため〜」のような文言をネット等で見ますが、そんな抽象的な言葉じゃ分からないですよね。
僕の県庁職員時代の経験から考えられる原因は以下のようなものです。
- 起案→決済のシステムが面倒すぎる
- 議会・議員対応
- 事業を減らす(やめる)ことがなかなかできず、増えていくばかりである
①・②は公務員特有の仕事のやり方・システムに関すること、③は行政組織・関係団体・議員などの関係性やしがらみに起因します。
それぞれについて詳しく解説しますね。
理由①起案→決済のシステム
公務員の仕事は、基本的にはどんなことでも「起案→決済」というシステムで行なっていきます。
簡単にいうと、担当者が起案文書や参考資料を作成し、課長以下に順々に回付して一人一人のハンコをもらっていく仕組みです。
最終的に決済者(課長など)がハンコを押したら「決済が下りた」ということで仕事を進められるのですが、これがもうとにかく面倒…
というのも、組織内でのやり取りや「担当者の裁量で良いのでは?」と思うような軽易な仕事でも、すべて起案→決済を経ないといけないから。
つまり、それだけ起案文書や参考資料の作成といった事務仕事が増えるので、どうしても仕事が多くなってしまうのです。
また、承認を得る必要のある人が多すぎて、その一人一人に説明をしないといけないので、仕事が増えるのは目に見えていますよね。
さらに、現在では「電子決済」が推奨されている場合も多いのですが、一回一回紙の資料をスキャンしてPDF化するという手間も生じてしまうので、それも仕事量を増やす要因になっています。
この「決済」の仕組みについては以下の記事で詳しく書いているので、興味のある方はぜひご覧ください。
理由②議会・議員対応
議会・議員対応も公務員の残業が多い大きな要因の1つ。
議会はすべて茶番なのですが、その茶番劇を演じるために、答弁書の中身を延々と議論します。
- ここの助詞は「の」じゃなくて「が」が良い
- 「検討してまいります」ではなくて「努力してまいります」にしよう
このような不毛で生産性のないやり取りが議会のたびに繰り返されるため、これに比例して残業時間も増えていくのです。
理由③事業を減らすことが難しく、増え続ける一方である
役所は行なっている事業がとにかく多いです。
- 事業を止める(潰す)のは非常に難しい
- 新規事業を出すことを強く求められる(特に課長が出世欲の強い人だと)
つまり、事業は増え続ける一方なんですよね。
事業が増える=仕事量が増えるということですし、事業が増えても人は増えないので、必然的に時間内には仕事がなかなか終わらなくなり、残業も多くなります。
なぜ事業をやめるのが難しいのかというと、調整が本当に大変だからです。
事業をやめるとなると、委託料として事業費を支払っていた団体や3セクに対して説明をしないといけません。
また、その事業をやめることで、議員からの要望や質問に答えられなくなる可能性がある場合、続けていかざるを得なくなります。
こんな感じで関係団体や議員のことを考えないといけないので、効果がないにも関わらず、惰性で続けているような事業が結構あることも否めませんね。
それでいて、すべての事業の「予算要求」という大変な仕事をやらないといけないので、残業も当然増えます。
本来ならば、事業を行なったらきちんと効果を検証して、効果のあるものだけを継続していくのが筋。
そして効果のないものを潰す代わりに新しいものを考えて事業化するなど、「スクラップ&ビルド」を徹底させることが必要でしょう。
公務員の残業が多い理由に関するまとめ
本記事の内容をまとめておきます。
- 公務員の残業時間のデータを鵜呑みにしてはいけない
- 公務員の残業が多いのは、公務員の仕事のやり方・システムや関係団体・議員などとの関係性に起因する
よく「公務員は残業が多くてブラック」なんて言われますが、それには相応の理由があります。
仕事上の内部手続きが複雑で面倒な上、抱えている事業数が多く、その事業も減らせないんですから。
「なんで公務員は残業が多いの?」という方の参考になれば幸いです。
今回は以上になります。ありがとうございました。
以下のnoteでは、僕の2年間の公務員経験から「受験前・入庁前に知っておきたい、公務員のリアルと未来」を書いています。
公務員になる方が知らないと確実に後悔することを詰め込んでいるので、気になる方はぜひどうぞ。