こんにちは!元公務員のHiroshiです。
公務員と言えば、「福利厚生が充実している」イメージを持つ方が多いと思います。
しかし、少し視点を変えると「本当に充実しているの?」と疑問が浮かぶ要素があるのが実情です。
「一般的に」は確かに高水準ですが、問題点がないとは言えないかなと。
そこで今回は、「公務員の福利厚生は本当に良いのか」を取り上げていきます。
先に言ってしまうと、今回の記事は当ブログの読者さんからの声がネタ元です。
他の読者の方にもぜひ考えていただきたい内容ですので、最後までお付き合いください。
【前提】公務員の福利厚生は、一般的には「良い」
冒頭でも触れたとおり、公務員の福利厚生は、一般的に考えれば間違いなく良いです。
具体的な福利厚生の例は以下のようなもの。
- 休暇制度:有給休暇・夏季休暇・年末年始休暇・療養休暇など
- 住宅手当:家賃の半額補助
- その他の手当:扶養手当・時間外勤務手当などいろいろ
- 職員向けの保険・積立・貸付←普通よりも好条件
- 施設・旅館/ホテル・映画などが安く利用できる場合あり
→ディズニーランド等も割引で行ける自治体も - 互助会から出る給付金など
- 健康診断/療養費の補助
他にもいろいろありますが、代表例を挙げてみました。
中でもとりわけ恵まれているのが、結婚・子育て面ですね。
公務員の福利厚生は、結婚・子育て関係が特に充実
公務員の福利厚生の中には、正直よく分からん手当もあります(笑)。
しかし、結婚・子育て関係は非常に充実している&多くの方が利用しています。
- 出産休暇
- 育児休暇
- 男性の育児参加休暇
- 時短勤務制度
- 結婚祝金・出産祝金:互助会や部署の親睦会から支給
代表例となるこの辺は、結婚されている方はほぼ全員活用している印象。
女性の方が働きやすいのはもちろん、男性も育児に関わることができる環境と言えます。
また、制度があるのみならず、職場全体として結婚や出産を後押しする雰囲気もあります。
- 小さな子どもがいる女性職員は、業務量的にも配慮してもらえる
- 子どもが熱を出した時などは、急な早退・休暇も取れる
- 子どもがいる職員のことは、周りの職員が積極的にフォロー
制度を利用しづらい空気感は一切なく、非常に良い風潮だと思いますね。
それでいて、女性の方も積極的に登用する流れもあります。
結婚や子育てに関する福利厚生面・仕事のしやすさ等に関しては、公務員は総じて非常に恵まれている印象です。
公務員の福利厚生は、一部の人にとっては「悪い」
上記のとおり、公務員の福利厚生は普通に考えれば「良い」です。
僕自身、公務員時代も退職後も「公務員の福利厚生は充実している」と思っていました。
しかし、ブログの読者さんから来たメッセージを読んで、考えが変わった部分があります。
「一部の人にとっては、公務員の福利厚生は決して良くはないな」と感じざるを得ませんでした
その「一部の人」とは、LGBT等の性的マイノリティの方です。
読者の方からいただいたメッセージについて
僕がいただいたメッセージの内容の一部を抜粋してご紹介します。
私にメールを下さったのは、現役の公務員で、同性愛者(ゲイ)の方でした。
休暇制度や子育て面、出産面など制度の部分をHiroshiさんもよく調べられており、記事の中で勉強になる部分が多くあります。(中略)
ここで別の角度から考えてみて欲しいのです。
Hiroshiさんの仰る公務員のメリットの福利厚生は、僕のようなゲイやレズビアンの人にとっても一般的に当てはまるものでしょうか。(中略)
公務員は杓子定規の仕事で、”変える”という性質とは程遠い職業です。
福利厚生の多くを享受できる人とそうでない人との不均衡にメスを入れたいという僕の方向性はまさに”変える”性質のものです。
国家機関の組織ピラミッドは、行政ピラミッドと同様にそういった若手の”変えたい”声を握りつぶすものです。
僕のような人間は、周囲がどんどん結婚し休暇を取り、子の看護休暇で突然休みを取ったり、時短勤務のフォローに当てられたり、永遠にフォローする側です。
そして結婚して家庭をもってこそ一人前の風潮が旧体質の公務員には根強いように感じます。
それで業績評価Aを貰っても、増えるお金は所詮ボーナスで1万程度です。
身上報告書で、配偶者の予定は??とか聞かれる事や、職場で育児の話が飛び交うのは、福利厚生が多くの人間にはメリットになっているはずにもかかわらず、正直僕にとっては地獄です。
公務員のメリットを多く享受できる層はどこか、そのメリットを誰かが受けて働きやすいということは、その反対に誰かをすり潰していることを意味しないか(中略)
(ちなみにこの方は、制度改革をしたい旨を面接の中で伝えて採用されたとのこと)
公務員の福利厚生は、「マジョリティ」が想定されている
上記のメッセージからも分かるのは、公務員の福利厚生は「マジョリティ」を想定して設計されていること。
恋愛対象が異性の、いわゆる「普通」の人にとっては非常に恵まれた制度です。
一方で、性的マイノリティの方にとっては、そもそも利用できる制度になっていません。
そして必然的に、子育て中・結婚した方のフォローに回るばかり。
他の人と同じく公務員試験に合格して、かつ互助会等には同じだけの負担金を払っていても、メリットは特に享受できません。
不公平感・疎外感を抱くのは、ごく自然なことだと感じました…
こんな指摘もあると思います。
しかし、独身の人はメリットを享受する「可能性」はあったわけです。
ある意味自分で「独身」を選んでいるので、最初から可能性0のマイノリティの方とは違うかなと。
また、公務員の子育て面の福利厚生・周りのサポートって、持ちつ持たれつ的な前提があるように感じます。
- ベテランの人:子どもが小さい時には自分も助けてもらったから…
- 若手の人:自分も将来的には助けてもらう可能性が高いから…
言葉には出さなくても、潜在的には上記のような思いがあるのではないでしょうか?
となると、現状の制度では性的マイノリティの方にとってはものすごくキツい。
- 福利厚生の制度の枠組みから外れている:心理的な疎外感
- 将来的にも自分がメリットを受けることはない
他の職員とは、潜在意識の部分で大きく異なってしまうと感じられます…
【公務員の福利厚生】最大多数の最大幸福は実現されているけど…
正直、いまの福利厚生でも「最大多数の最大幸福」は実現されていると思うんですよね。
(民主主義では功利主義的な考えが正義とされます)
子育てしやすいのは間違いないので、大多数の「マジョリティ」にとっては素晴らしい制度が整っています。
対外的にも「福利厚生」の充実をアピールすることも可能で、人材確保にもつながります。
しかし、その制度から外れた人に負担がかかっていることも同時に考えるべきかなと。
(他人に不幸や負担をもたらすことで全体の幸福が増えることが正当化されるのも、功利主義の問題点と言われます)
本当の意味で「多様な働き方」にはならない?
採用パンフや自治体案内では、「多様でワークライフバランスを重視して働ける」的なことが書いてあります。
その具体例として、子育て支援(休暇制度・時短勤務等)がよくアピールされますが…
想定しているのがマジョリティの人のみである以上、正直多様性はないですよね。
日本に公務員は約330万人います(国家公務員・地方公務員あわせて)。
となると、マイノリティ側の人も相当数いると考えるのが自然です。
にもかかわらず、大半の自治体や国はマジョリティを念頭に置いた制度になっています。
(世田谷区など、ごく一部に性的マイノリティ向けの福利厚生がある自治体もありますが)
「多数派の人間しか考えていない=多様性を否定している」とも捉えられるかと。
多分そんなつもりはないんだと思いますが、「多様性」について再考する段階かもしれません。
【まとめ】公務員の福利厚生は確かに良い。しかし、見直しのフェーズに入っている
記事の前半でも触れた通り、公務員の福利厚生は確かに良いです。
特に結婚や子育て面に関しては高水準で、多くの方にとっては大きなメリットがあります。
しかし、その枠組みから外れてしまう人も少なからずいます。
そして彼らが背負う疎外感や負担については、確実に考えるべきことかなと。
生き方などが多様化している昨今ですが、社会全体が多数派向けにできているのは否めないところ(仕方ないかもですが)。
僕はノンケですが、やはりマイノリティの方にとっては生きにくいと想像できます。
その中で、公務員が同性愛者等の方向けに福利厚生を充実させたりする意義って結構大きいと思うんですよね。
福利厚生のメリットの不均衡を小さくするのはもちろん、民間にも確実に良い影響・変化の契機を与えるはず。
行政は基本横並び(自治体間も)ですし、変化を嫌う部分が大きいです。
職員向けの福利厚生をさらに充実させるとなると、批判も出てくるかもしれません。
- 先進的な自治体で福利厚生の改善が議論・導入
- 少しずつ同様の福利厚生を取り入れる自治体が増える
- マイノリティ向けの福利厚生が徐々に一般的になる
必然的に、上のような流れが現実的かなとは思います。
公務員の「前例踏襲」は意味がかなり広いです。。
とはいえ、世の中の流れ的に、異なる視点から見直すフェーズに入っているのは明らか。
「職員を守る」という本来の福利厚生の意味のみならず、より広い視点で社会を良くすることにもつながります。
制度から外れた人を全て拾うのは難しいし、現実的に無理です。
しかし、時代の流れに即して少しストライクゾーンを広げるのは、必要なことではないでしょうか?
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