こんにちは!元公務員のHiroshiです。
国や県、市町村って「〇〇事業」や「〇〇補助金」といった政策や制度を行なっていますよね。
そういった事業や補助金もタダではできません。
民間企業と同じく、あれらは全て年度ごとに予算が決められていて、その予算の範囲の中で行われているんです。
では、公務員の場合だとその「予算」はどのように決められているのでしょうか?
そこで、今回は「予算」をテーマに、公務員の仕事の1つである「予算編成」を取り上げます。
本記事の内容
- 公務員の「予算編成(予算要求)」業務について【流れを解説】
- 予算編成の時期は忙しいのか
- 予算要求がある公務員とない公務員
元公務員の僕が自分の経験をふまえて解説していきますね。
予算編成(予算要求)は公務員になった方が避けて通れない業務でもありますので、「これから公務員になろう」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。
【公務員の仕事】行政の予算編成(予算要求)の流れ
役所には、その自治体の「カネ」を握っている部署(=財政課)があります。
予算編成(予算要求)を簡単にいうと…
「〇〇という事業をするのに〜円必要ですよ」ということを財政課に説明し、財政課に予算を組んでもらうこと
公務員志望の方の中には「〜に関する政策を作りたい」という方がいるかと思いますが、政策を作るには予算編成の業務を経る必要があります。
なお、基本的には年度単位で予算は組まれます(当初予算)が、予算が足りなくなったり、年度途中から事業を始める場合には「補正予算」が組まれるのが通例です。
言葉にすると非常に単純ですが、このプロセスが結構面倒くさい…
基本的には、以下のような流れで予算要求は進んでいきます。
- 課内・部局内で来年度の事業などに関する調整・ミーティング
→何の事業でいくらくらい予算要求するか決める - 財政課に予算要求書を提出
- 財政課担当職員によるチェック、および事業担当者へのヒアリング
- 財政課担当職員が財政課長などの上司に説明
- 財政課長が首長(知事や市長)に説明
- 知事が承認すれば、年度末の議会へ
ちなみに新規事業のみならず、何年も継続して行なっている事業でも同様です。
では、それぞれのプロセスについて詳しく説明していきますね。
公務員の予算編成の流れ①課内・部局内での調整
まずは課内・部局内で「来年度は何の事業にいくらの予算を要求するか」を調整します。
この流れとしては以下のような感じです。
- 事業ごとに担当職員が予算要求書や参考資料などを作成
- ①で作成した資料をもとに、課長などの上司に説明・ヒアリング
- 課長のOKがもらえたら、今度は部局の中での調整
→部長が各課長や事業担当の職員からヒアリング
担当の職員(ヒラの公務員)としては、課長補佐などの直属の上司と相談しながら予算要求書を作成し、まず課長に納得してもらえればOK。
なかなか納得してもらえないと、事業の方法や予算額などを考え直さないといけないので結構大変です。
ちなみに予算要求書には「何にいくらかかるか」等を詳細に記載します。
公務員の予算編成の流れ②財政課へ予算要求書を提出
部長の承認が下りたら、財政課へ予算要求書を提出します。
なお、これは部局単位で取りまとめて提出するので、事業担当の職員が個別にやることはありません。
公務員の予算編成の流れ③財政課担当のチェック&ヒアリング
財政課に予算要求書が提出されたら、財政課の職員がチェックし、事業担当職員へのヒアリングを行います。
このチェックやヒアリングが非常に厳しい…
- 自治体全体の方針に合っているか
- 本当に効果が期待できるのか→根拠はあるか
- 事業の実績は出ているのか(継続事業の場合)
- 他にコストの低いやり方はないか
- 要求金額は妥当か
→近隣自治体の同じような事業の予算額は?
まぁ他にも色々あるのですが、重箱の隅をつつくような質問がバンバンなされます。
財政課は「削れる部分は削って、効果の期待できるところにのみ予算を投下する」というスタンスだからですね。
また、財政課の担当も後述する財政課内の調整において、上からの厳しいツッコミに対応しないといけません。
そのため、財政課内のあらゆる意見に対応できるように、事業担当者に対して厳しく深掘りして、納得できる詳細な説明を求めます。
この財政課からのヒアリングに対して、財政課が納得する説明や根拠の提示ができないと、予算がどんどん削られていきます。
財政課にわたる予算書は各部の部長がOKを出したものですが、それを若手の財政課職員がバッサバッサとカットいくのも少し面白いですよね(笑)。
財政課には予算担当者がいて、各課の事業に関するヒアリングはこの担当者が行います。
この予算担当者は20代〜30代の若手(主事・主任級)で構成され、「〇〇部担当」のような形で、各自が自分の担当する部局の事業に関する予算を査定します。
ちなみに彼らは将来的に出世が期待されている幹部候補であることが大半です。
公務員の予算編成の流れ④財政課内での調整
ヒアリングが終わり、財政課の予算担当者が納得したら、今度は財政課内での調整に入ります。
具体的には、財政課の予算担当者が財政課長以下の上司に対して、事業の予算が必要な理由を1つ1つ説明していく感じです。
なお、この説明の中で上からの疑義があった場合には、再び事業担当者がもろもろのヒアリングを受けることもあります。
ここで財政課長が承認したら次のステップです。
公務員の予算編成の流れ⑤財政課長が首長に説明
財政課長(財政部局の長)が各予算について承認したら、その予算案を首長(知事や市長)に説明します。
何もなければ良いのですが、ここで首長からのツッコミが入るとめちゃくちゃ大変になりますね。
「もっと予算を上げろ」「他のやり方がいいんじゃないの?」と首長が言うと、担当課としてはNOと言えず、その通りにするしかなくなります。
大急ぎで積算(費目ごとにいくらかかるか見積もり)をして、事業のスキームを練り直して…という感じ。
公務員の行政組織は首長を頂点としてトップダウン型の組織なので、上の言うことは絶対。決して逆らうことはできない(逆らう人もいない)構造です。
ぶっちゃけワンマン首長による独裁も可能なんですよね…
公務員の予算編成の流れ⑥首長が年度末の議会にかける
最後に、首長が年度末の議会にて予算案を提出します。
まぁこれは民主主義の形式上、一応やっているという感じで、予算案が承認されないことはほぼありません。
予算編成の時期の公務員の仕事について
予算編成の時期は、1年の中でも最も忙しいです。
通常業務に加えて、予算書や説明資料をつくったりしないといけないわけですから。
財政課だろうと事業課だろうと忙しいですね。
ただ、事業課の担当は自分の担当している事業の説明が終わってしまえばOKなのに対して、財政課は自分が担当する部全体の予算を1人で見るので忙しさのレベルが違います。
事業課の職員も深夜まで残業がありますが、財政課だと連日の深夜残業に加えて土日も返上で働きます。
若手だろうと関係なく予算編成を行う
予算編成(予算要求)は業務のレベルとして高いのですが、担当している事業がある場合は、1年目・2年目の若手公務員でも行います。
前述したように、予算要求はやることも多く、上に承認を得る作業ばかりで大変なので、「少なくても主任級からやればいいのに…」と思わなくもないですが仕方ありませんね。
これを読んでいる公務員内定者の方は、配属次第では1年目から予算編成業務を行うことになると思っておくとよいでしょう。
予算要求を行う公務員と、行わない公務員
ただ、すべての公務員が予算編成の仕事を行うわけではありません。
予算編成(要求)の仕事がある公務員は以下のような方々だけです。
- 財政課の職員
- 事業課の職員(お金を使う事業を担当している公務員)
- 総務(庶務)担当の職員
→各課の職員の人件費や備品の予算を要求する
つまり、これらに該当しない出先機関などの公務員は予算要求の仕事がないということです。
そのため、ほとんど予算に関する仕事をしないまま、役職が上がっていく方も意外と少なくありません。
公務員の予算編成の仕事に関するまとめ
今回の内容をまとめておきます。
- 公務員の予算編成(予算要求)は①課内調整②財政課ヒアリング③財政課内での調整④知事説明を経て行われる
- 予算編成の時期は通常業務に加えて予算の仕事があるので、非常に忙しくなる
- 出先機関の職員など、予算要求を行わない公務員もいる
本記事の「予算編成」は公務員になった場合にいずれ担当する可能性が高い業務。
これから公務員になる方はぜひ参考にしてくださいね。
今回は以上になります。ありがとうございました。
以下のnoteでは、僕の2年間の公務員経験から「受験前・入庁前に知っておきたい、公務員のリアルと未来」を書いています。
公務員になる方が知らないと確実に後悔することを詰め込んでいるので、気になる方はぜひどうぞ。